図書館でいもとようこさんの絵本「シンデレラ」を借りる。
娘がいもとようこさんの作品を好んでよく読んでいる。
その影響で僕もよく読んでいる。
優しいタッチの絵。絵を見るだけで「これはいもとようこさんの絵だ。」と認識出来るほど。
「シンデレラ」の物語の中で、「シンデレラは『灰かぶり』という意味だ」というセリフが出てくる。
はじめて知った。
シンデレラはディズニー作品のイメージが強く、ディズニープリンセスの代表格だと認識している。
「シンデレラ」と聞けば美しいお姫様を想像するのだが、その名前が「灰かぶり」というのは知りたくなかったような気もする。
シンデレラの原作は「グリム童話」だと思っていたのだが、ウィキペディアによるとどうやら違うみたいだ。
「グリム童話のシンデレラは少し怖い」というイメージがある。
そんな特集を組まれたテレビ番組を昔観た記憶があるからだ。
いもとようこさんのシンデレラはディズニーのストーリーとだいたい同じだ。
僕の記憶になかったのは「父親を亡くしたシンデレラ」という設定だ。
ディズニー版でも「父親を亡くしたシンデレラ」という設定は同じらしい。
母親を早くに亡くしており、父が再婚した相手があの「意地悪な継母」だ。
父は「意地悪な継母」と再婚した後、不慮の事故で命を落としてしまう。
そして、意地悪な継母とその娘たちにこき使われる日々が始まる。
気になったのは「シンデレラの元の名前」だ。
シンデレラは意地悪な継母が付けたあだ名だ。
ということは元の名前があるはずだ。
ググるとすぐに答えは出てきた。
『シンデレラの本当の名前は「エラ(Ella)」。家事を押し付けられて暖炉を掃除しているときに灰まみれになったことから、継母に「灰かぶりのエラ」という悪口を言われ、シンデレラと呼ばれるようになった。』
とのこと。
「灰」という意味の言葉と「エラ」を組み合わせてシンデレラ。全く酷い継母だ。
次に気になったのは、亡くなった父親はこの意地悪な継母の本性を見抜けなかったのか?というところだ。
「シンデレラの父親はどうして再婚したのか?」と調べる。作者によって設定が色々と違うようだ。
なるほど。と感じたのは、「幼い頃に母を失った娘の将来を思い、母という存在を娘に伝えたかった」という説。
やはり、父親はとても娘思いなのだ。そんな優しい父親がどうして騙されてしまったのか。いや、優しいが故に騙されてしまったのだろうか。
同じような感覚を別の物語でも感じたことがある。「舌切りすずめ」だ。
「舌切りすずめ」の絵本も子ども達に何度も読み聞かせをしたことがある。
優しいおじいさんがすずめを助けて一緒に暮らすようになる。
でも意地悪なおばあさんがそのすずめの舌を切ってしまう。
恐ろしいおばあさんである。
最終的にはおばあさんは心を入れ替えるのだが、すずめの舌を切るという本性は消えないのではないか?と不安になる。
優しいおじいさんはどうしてこの意地悪なおばあさんと結ばれたのか。
「舌切りすずめ」にも原作があるらしい。「腰折れすずめ」というお話だそうだ。
その原作に登場するのは「となりの意地悪なおばあさん」らしいのだ。それなら話はよくわかる。
また「舌切りすずめ」の考察のひとつに、「助けたすずめ」というのは比喩表現で、実際に助けたのは「若い娘」で、おじいさんが優しく接する若い娘に嫉妬をしたおばあさん、というのがあった。
これはこれで話は通るが、優しいおじいさんの意味合いが大きく変わってしまう。完全に「鼻の下が伸びているおじいさん」になっている。
そういった「大人たちのややこしい関係性」を簡潔に、物語が子どもにもわかりやすく、伝わりやすくするために「意地悪な継母」や「意地悪なおばあさん」が誕生したのであれば、少し可哀想な気もする。
絵本などの物語の本質はそういう細かい部分ではなく、「正しい行いをしていれば報われる日が来る」や「欲深く、意地悪ばかりしていると痛い目に合うぞ」という大きなテーマを子どもたちに物語を通じて伝えるというのが目的なのだろう。
そこで、物語の都合上、「悪者」を設定しなければならず、「意地悪な継母」、「意地悪なおばあさん」にご活躍していただく、というのが流れなのだろう。
そうすれば「優しい父親」や「優しいおじいさん」がどうして「意地悪な人」と一緒になったのか?という理由も納得出来る。
僕はそう解釈することにした。
「意地悪な人」にもそれなりの理由があるのだと。
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