ダンボールや古紙、ペットボトルに缶など、専用の回収機に持ち込むことでポイントがもらえるというシステムがある。
ポイントを一定以上貯めると、商品券が発行されたり、ポイント分の買い物が出来たりする。
年末のお休み中にはじめてその存在を知る。
仕事に出ているときはそういったゴミ捨てなどは完全に任せてしまっていたからだ。
「今後はなるべく自分が行くようにしよう」と、ダンボールや古紙をまとめ、車に載せ、回収ボックスに向かう。
専用のカードをかざし、ゴミを投入。
ゴミの重さで付与されるポイントが決まる。
カードにポイントが付与されたのを確認し、自分の車に向かっていた。
その時、不思議な音が聞こえた。
ガチャガチャ。ガチャガチャガチャ。と不定期に聞こえる音。
音のする方に目をやると、運転席側のドアハンドルに手をかけた女性の姿があった。
その女性が運転席側のドアハンドルを何度もガチャガチャと動かしていたのだ。
車上荒らし?…にしては目立ち過ぎだ。おそらくインキー(インロック)したのだろう。
ただ、インキーしたのなら、ドアハンドルを何度動かしても扉が開くことはない。
にも関わらず、延々とガチャガチャ動かしている。
助手席側やバックドア側に移動することなく、ひたすらに。
万が一、その女性の車ではなかった場合…というのも頭の片隅にあった。
僕は自分の車に向かう間、時間をかけてゆっくりと歩いた。
女性の後ろ姿をたまに確認しつつ、自分の車にたどり着く。
僕が運転席に乗り込んだとき、その女性はどこかに向かって歩きはじめた。
こういったときに「どうかされましたか?」とサラッと声をかけられるほどのコミュ力は持ち合わせていない。
それと、「少し怖かった…」というのも正直なところだ。
「困っているかもしれない」という考えより「関わらないほうが身のためかもしれない」という考えが勝っていた。
「優しい人なら声をかけたのかなぁ?」と”存在するかどうかもわからない誰か”と自分を比較して勝手に凹む。
そこで、「自分ならどうするか・どうしてほしいか」と考える。
もし僕がインキーしてしまった場合。
インキーに気付いたときに扉をガチャガチャすることはないだろう。
何度開けようとしても開かないのはわかっているからだ。
仮に何度もガチャガチャすることで開いてしまう扉なら、それはそれで別の問題が発生する。
そして、今回僕がその女性に対して不審感を抱いたように、「怪しい人」と思われる可能性がある。それは避けたい。
なので、僕ならすぐに諦める。すぐに誰かに連絡をする。
スマホなども車の中に閉じ込めてしまったのなら歩いて帰る。
もしくは、近くの車屋さんなどに駆け込むかもしれない。
自分なら、周りに怪しまれるようなこと、声をかけられるようなことはしないだろう。
と、考える。
だから、その女性の行為がとても怖く見えたのだ。と自分を納得させた。
ちょっとゴミを捨てに行くだけでも不思議な出来事は転がっている。
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